第15回 力の正体④ 力のつり合い

第2章 力の正体
黒沼先生
黒沼先生

黒沼 電蔵
物理の教鞭をとっている
しょうゆ

波多野さん
波多野さん

波多野さん
勉強が苦手な女の子
ソース

光井 くん
光井 くん

光井くん
勉強が得意な男の子
塩・胡椒

はじめに

黒沼先生
黒沼先生

前回は、身の回りではたらく力について学んだの。

波多野さん
波多野さん

机の上に置いた物体には、下向きの重力と上向きの垂直抗力がはたらいているんだよね。

光井くん
光井くん

垂直抗力は、物体が接している面から垂直に受ける力でした。

黒沼先生
黒沼先生

うむ。では、なぜ机の上の物体は落ちないのか、もう答えられるじゃろう?

波多野さん
波多野さん

垂直抗力が重力を打ち消しているからかな?

黒沼先生
黒沼先生

エクセレント!
二つの力を合わせた合力が \(0\) になっているのじゃ。
このように、物体にはたらく複数の力が互いを打ち消しあっている状態を、力がつり合っているという。

光井くん
光井くん

今回は、単独の力ではなく、複数の力を合わせた結果に注目するのですね。

黒沼先生
黒沼先生

その通り。まずは、二つの力がつり合いから見ていこう。

力がつり合うとは

黒沼先生
黒沼先生

複数の力が一つの物体にはたらいていても、それらの合力が \(0\) になることがある。
この状態を、力がつり合っているというのじゃ。
式では、

\(\boxed{\vec{F}_1+\vec{F}_2+\cdots=\vec{0}}\)

と表せるぞ。

波多野さん
波多野さん

合力が \(0\) ってことは、力がはたらいていないのと同じじゃない?

黒沼先生
黒沼先生

いい質問じゃ。結果は同じになるが、力がなくなったわけではないぞ。
例えば、机の上の箱には下向きの重力 \(mg\) と、机から受ける上向きの垂直抗力 \(N\) がはたらいてじゃろう。

光井くん
光井くん

二つの力はつり合っているから、式で表すと、

\(\boxed{N=mg}\)

となりますね。

波多野さん
波多野さん

互いのはたらきを打ち消しているんだね。

2力のつり合いを見てみよう

黒沼先生
黒沼先生

では、2力のつり合いを見てみよう。
左向きの力 \(F_1\) と、右向きの力 \(F_2\) を、どちらも \(8\ \mathrm{N}\) に設定して「再生」を押すのじゃ。

波多野さん
波多野さん

全然、動いてない。

黒沼先生
黒沼先生

左向きに \(8\ \mathrm{N}\)、右向きに \(8\ \mathrm{N}\) の力がはたらいているからじゃ。
力がはたらいていないわけじゃないぞ。

光井くん
光井くん

二つの力の大きさが等しく、向きが反対なので、互いに打ち消し合っているのですね。

2力がつり合うための条件

黒沼先生
黒沼先生

二つの力がつり合うためには、次の三つの条件をすべて満たす必要がある。

  1. 二つの力の大きさが等しい
  2. 二つの力の向きが逆である
  3. 二つの力が同一直線上にはたらく
波多野さん
波多野さん

大きさと向きだけじゃないの?

黒沼先生
黒沼先生

二つの力の作用線がずれていると、物体を回転させるはたらきが生じることがある。そのため、同一直線上という条件も必要なのじゃ。

光井くん
光井くん

式で表すと、

\(\boxed{\vec{F}_1+\vec{F}_2=\vec{0}}\)

大きさだけを比べると、

\(\boxed{F_1=F_2}\)

ですね。

力の大きさが異なる場合

黒沼先生
黒沼先生

今度は、左向きの力 \(F_1\) を \(5\ \mathrm{N}\)、右向きの力 \(F_2\) を \(10\ \mathrm{N}\) にしてみよう。

波多野さん
波多野さん

物体が右へ動き始めた!

黒沼先生
黒沼先生

このときの合力は、

\(R=10-5=5\ \mathrm{N}\)

となる。
したがって、物体には右向きに \(5\ \mathrm{N}\) の合力がはたらくのじゃ。

光井くん
光井くん

合力の向きは、大きいほうの力と同じ向きになることに注意ですね。

波多野さん
波多野さん

じゃあ、左向きの力を大きくすれば、物体は左へ動くんだね。

黒沼先生
黒沼先生

うむ。実際にスライダーを動かして確かめてみるとよいぞ。

3力のつり合いを見てみよう

黒沼先生
黒沼先生

力は、いつも二つだけとは限らない。そこで、三本の糸で一つのリングを引く場合を考えてみよう。
\(F_1\)、\(F_2\)、二つの力の間の角度をスライダーで変えてみるのじゃ。
紫色の \(F_3\) は、三つの力がつり合うように自動で調整されるぞ。

光井くん
光井くん

三つの力をすべて合わせた結果が \(0\) になるように、\(F_3\) が変化しているということは、

\(\boxed{\vec{F}_1+\vec{F}_2+\vec{F}_3=\vec{0}}\)

となりますね。

黒沼先生
黒沼先生

ここで、\(F_1\) と \(F_2\) の合力を \(\vec{R}\) とすると、

\(\vec{R}=\vec{F}_1+\vec{F}_2\)

じゃ。
この合力を打ち消すためには、\(F_3\) が \(\vec{R}\) と同じ大きさで、反対向きにはたらけばよい。つまり、

\(\boxed{\vec{F}_3=-\vec{R}}\)

となるのじゃ。

波多野さん
波多野さん

まず二つの力を合成して、その合力を三つ目の力で打ち消しているんだね。

力の三角形

光井くん
光井くん

三つの力を順番につないだ図も表示されていますね。

黒沼先生
黒沼先生

うむ。三つの力がつり合っているとき、それぞれの向きを変えずにつなぐと、三角形ができるのじゃ。
これを力の三角形という。

波多野さん
波多野さん

そっか!
最後の矢印が出発点に戻っているから、結果として \(0\) になるんだ!

黒沼先生
黒沼先生

エクセレント!
力の三角形を見ると、

\(\vec{F}_1+\vec{F}_2+\vec{F}_3=\vec{0}\)

という関係を図から確認できるのじゃ。

力のつり合いを調べる手順

波多野さん
波多野さん

でも、どの力がつり合いの関係なのか一目じゃわからないよね?

黒沼先生
黒沼先生

大丈夫じゃ。
問題で力のつり合いを調べるときは、次の順番で考えるとよい。

① 注目する物体を決める
② 物体にはたらく力をすべて描く
③ 方向ごとに分ける
④ それぞれの方向で合力を0にする

力がつり合っているときは、

\(\sum F_x=0\)

\(\sum F_y=0\)

という関係が成り立つぞ。

波多野さん
波多野さん

力の矢印を全部書いちゃえばいいんだ!

光井くん
光井くん

大きさだけでなく、向きにも注意が必要ですね。

今日のまとめ

黒沼先生
黒沼先生

今日のポイントを整理しておこう。

  • 複数の力の合力が \(0\) になる状態を、力がつり合うという
  • つり合いは同じ物体にはたらく力どうしで考える
  • 力がつり合っていても、それぞれの力がなくなったわけではない
  • 2力がつり合うには、大きさが等しく、向きが反対で、同一直線上にはたらく必要がある
  • 2力がつり合っているとき、

\(\vec{F}_1+\vec{F}_2=\vec{0}\)

  • 3力がつり合っているとき、

\(\vec{F}_1+\vec{F}_2+\vec{F}_3=\vec{0}\)

  • つり合っている3力を順番につなぐと、力の三角形が閉じる

次回 ニュートンの運動の第1法則ー慣性の法則

波多野さん
波多野さん

力のつり合いについてよくわかったよ!
物体が動いてるってことは力がつり合ってないってことなんだ!

黒沼先生
黒沼先生

ふぉっふぉっふぉ。そうとは限らないぞ。
確かに静止している物体なら、そのまま静止し続ける。しかし、すでに動いている物体なら、力がつり合っていても動き続けるぞ。

波多野さん
波多野さん

合力が \(0\) なのに動くの!?

光井くん
光井くん

次回は、その仕組みを学ぶのですね。

黒沼先生
黒沼先生

うむ。次回は、ニュートンの運動の第1法則――慣性の法則を勉強しよう。
実験のために台車を用意したぞ。ほれ、光井くんのってみい。

光井くん
光井くん

どうする気ですか?

波多野さん
波多野さん

じゃあ、あたしがのるよ!

黒沼先生
黒沼先生

え、あ、いや。やっぱ、やめとこうか。
よく考えたら危なそうだし。ケガしたらよくないしね。
光井くん、台車かたしといて。

光井くん
光井くん

僕の安全は、検討事項にすら入らないんですね。

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