
黒沼 電蔵
物理の教鞭をとっている
過去に戻りたい

波多野さん
勉強が苦手な女の子
今日はカレーがいいなぁ

光井くん
勉強が得意な男の子
宇宙に行ってみたい
はじめに

今日は二人に、綱引きをしてもらおう。二人で協力してわしを引っ張るのじゃ。

何でそんなことしないといけないんですか。

今回のテーマ「力の合成」を実感してもらいたくての。
さぁ、二人の力を一つに合わせれば、わしを動かせるかもしれんぞ。

よーし!
思いっきり引っ張るよ!

ちょっと待って!
二人が別々の方向へ引いたら…。

いたい、いたい!!
あ……! らめぇ~。
さけちゃうぅ~!!

何で、ちょっとうれしそうなんですか。
力は矢印で表せる

まずはおさらいじゃ。
前回は、力を矢印で表すことを学んだね。
力の矢印から読み取れるのは、次の三つじゃ。
・矢印の始点:力の作用点
・矢印の向き:力の向き
・矢印の長さ:力の大きさ

力を合成したり分解したりするときも、この矢印を使うのですね。

その通りじゃ。
力の合成と分解を見てみよう
力の合成

まずは、二つの力が同じ向きにはたらく場合を考えてみよう。
同じ作用点に、右向きの力 \(F_1\) と \(F_2\) がはたらいているとする。


どちらの力も、物体を右へ動かそうとしているね。

うむ。この場合、二つの力は互いのはたらきを強め合う。
力の矢印を同じ向きに並べると、合力の矢印は \(F_1\) と \(F_2\) をつなげた長さになるのじゃ。
したがって、合力の大きさ \(R\) は、
\(\boxed{R=F_1+F_2}\)
となる。

同じ向きの力は、大きさをそのまま足せばいいんだね。

次は、二つの力が同一直線上で反対向きにはたらく場合を考えてみよう。右向きの力 \(F_1\) と、左向きの力 \(F_2\) がはたらいていたとする。


二つの力が、互いに引っ張り合っているね。

うむ。この場合、二つの力は互いのはたらきを打ち消し合う。そのため、合力の大きさは二つの力の差になるのじゃ。
\(\boxed{R=|F_1-F_2|}\)
絶対値が付いているのは、合力の大きさを正の値で表すためじゃ。そして、合力の向きは大きいほうの力と同じ向きになる。

逆向きの力では、「大きいほうから小さいほうを引く」「向きは大きいほうに合わせる」と考えればよいのですね。

なんだ、簡単じゃん!
力の向きを考えよう

ところがどっこい。二つの力の向きが異なる場合はそう単純ではないのじゃ。
どういうことか、実際にアニメーションで見てみよう。
「力の合成」を選び、二つの力の大きさと角度を設定して「再生」を押してみるのじゃ。

紫色の矢印 (R) が、二つの力を合わせた力じゃ。
このように、複数の力を、それらと同じはたらきをする一つの力にまとめることを、力の合成という。
合成してできた力を、合力といってこのような式で表されるのじゃ。
\(\boxed{\vec{R}=\vec{F_1}+\vec{F_2}}\)

力には大きさだけでなく向きがあるので、そのまま足せばいいというわけではないのですね。

うむ。向きの異なる二つの力を合成するときは、平行四辺形の法則を使う。
手順は次のとおりじゃ。
- 二つの力の矢印を同じ作用点から描く
- 二つの矢印を辺とする平行四辺形を作る
- 作用点から対角線を引く。
この対角線が合力になるのじゃよ。

ひぇ~。そんなに簡単じゃなかった!
力の分解

合力の大きさを求めるまえに、アニメーションの「力の分解」を見てみよう。


斜めの力から、横向きの \(F_x\) と縦向きの \(F_y\) が出てきた!

このように、一つの力を、それと同じはたらきをする二つ以上の力に分けることを、力の分解という。
分解してできたそれぞれの力を、分力というぞ。

でも、どうして分ける必要があるの?

よい質問じゃ。物体の運動を考えるとき、水平方向と鉛直方向を別々に調べると分かりやすくなるからじゃ。
例えば、荷物を斜め上向きに引っ張る場合、その力には、
- 荷物を前へ進めるはたらき
- 荷物を上へ持ち上げるはたらき
の両方が含まれている。
このほかにも斜面上の物体や、糸で引かれた物体の運動を考えるときにも、力の分解が重要になるぞ。
合力の大きさ

合力の大きさはどうやって出せばいいの?
矢印の長さを図ればいいの?ものさし?

平行四辺形の対角線の長さを出せばいいんだよ。

それがわからないんだよ!
そんなに自信があるなら、説明してみてよ!

え、うん、わかったよ。
アニメーションの図では大きさが \(F_1\)、\(F_2\) の二つの力があって、その間の角度が\(\theta\) だったよね。


平行四辺形の対角線が合力 \(R\) だったね。

うん。今回は、力 \(F_2\) を \(F_1\) と同じ水平方向と、鉛直方向へ分解して考えるよ。
\(F_2\) のうち、\(F_1\) と同じ方向の水平成分は、
\(F_2\cos\theta\)
\(F_1\) に鉛直方向の成分は、
\(F_2\sin\theta\)
になるんだ。


力の分解を使うんだな。
で?

(なんか、変だな)
同じ向きの力の大きさは足すことができるから、合力 \(R\) の水平方向の成分は、
\(F_1+F_2\cos\theta\)
鉛直方向の成分は、
\(F_2\sin\theta\)
になるよね。

だから?


この二つの成分は互いに直角なので、三平方の定理を使うことができるんだ。
\(R^2=(F_1+F_2\cos\theta)^2+(F_2\sin\theta)^2\)
右辺を展開すると、
\(F_1^2+2F_1F_2\cos\theta+F_2^2\cos^2\theta+F_2^2\sin^2\theta\)
ここで、
\(\sin^2\theta+\cos^2\theta=1\)
だから、
\(R^2=F_1^2+F_2^2+2F_1F_2\cos\theta\)
両辺の正の平方根を取れば、合力の大きさは、
\(\boxed{R=\sqrt{F_1^2+F_2^2+2F_1F_2\cos\theta}}\)
となるんだ。

ふむ、力の分解と、三平方の定理を使ったんじゃな。
なかなか、やるのう。

な…、まさか!!

ふぉ、ふぉ、ふぉ……。
(ベリベリベリ!!)

わしじゃよ。

何してんですか!!

入れ替わっていたのさ!!

ちなみに、ここでは水平方向と鉛直方向への力の分解がみそじゃ。

だから、なんで入れ替わってたんですか!!
合成と分解の関係

力の合成と分解って、まったく別の計算なのかと思ってた。

実は、同じ関係を反対側から見ているだけじゃ。
\(\vec{F_x}+\vec{F_y}=\vec{F}\)
左辺から右辺を見ると力の合成、右辺から左辺を見ると力の分解になる。

アニメーションで「合成」と「分解」を切り替えて見比べると、その関係が分かりやすいですね。
今日のまとめ

今日のポイントを整理しておこう。
- 複数の力を一つにまとめることを力の合成といい、合成してできた力を、合力という
- 向きの異なる二つの力は、平行四辺形を使って合成できる
- 一つの力を複数の力に分けることを力の分解といい、分解してできた力を、分力という
- 斜めの力は、水平方向と鉛直方向に分解できる
- 水平方向の分力\(F_x\)と鉛直方向の分力\(F_y\)は、
\(\boxed{F_x=F\cos\theta}\)
\(\boxed{F_y=F\sin\theta}\)

力を矢印で考えると、合成も分解も分かりやすかった!

矢印の向きと長さを正しく描くことが大切ですね。
次回 身のまわりにはたらく力

机の上に置いた荷物、糸でつるした物体、動いていないくとも、ちゃんと力が働いているのじゃ。

へぇ~。

では、わし自身を糸でつるして確かめてみるかの。
波多野さん、縛って💕

じゃあ、ぼくが縛りますね。(ぎゅっ!)
つるしますよ~。

わっ!こわい。
ひぇ~。おもったより、こわいお。
もう、お、おろしてぇ。

(ブチッ)
ぐぇ!!

重力は、ちゃんと働いているみたいだね。
