第13回 力の正体② 力の合成と分解

第2章 力の正体
黒沼先生
黒沼先生

黒沼 電蔵
物理の教鞭をとっている
過去に戻りたい

波多野さん
波多野さん

波多野さん
勉強が苦手な女の子
今日はカレーがいいなぁ   

光井 くん
光井 くん

光井くん
勉強が得意な男の子
宇宙に行ってみたい

はじめに

黒沼先生
黒沼先生

今日は二人に、綱引きをしてもらおう。二人で協力してわしを引っ張るのじゃ。

光井くん
光井くん

何でそんなことしないといけないんですか。

黒沼先生
黒沼先生

今回のテーマ「力の合成」を実感してもらいたくての。
さぁ、二人の力を一つに合わせれば、わしを動かせるかもしれんぞ。

波多野さん
波多野さん

よーし!
思いっきり引っ張るよ!

光井くん
光井くん

ちょっと待って!
二人が別々の方向へ引いたら…。

黒沼先生
黒沼先生

いたい、いたい!!
   あ……!   らめぇ~。
          さけちゃうぅ~!!

光井くん
光井くん

何で、ちょっとうれしそうなんですか。

力は矢印で表せる

黒沼先生
黒沼先生

まずはおさらいじゃ。
前回は、力を矢印で表すことを学んだね。
力の矢印から読み取れるのは、次の三つじゃ。

・矢印の始点:力の作用点
・矢印の向き:力の向き
・矢印の長さ:力の大きさ

光井くん
光井くん

力を合成したり分解したりするときも、この矢印を使うのですね。

黒沼先生
黒沼先生

その通りじゃ。

力の合成と分解を見てみよう

力の合成

黒沼先生
黒沼先生

まずは、二つの力が同じ向きにはたらく場合を考えてみよう。
同じ作用点に、右向きの力 \(F_1\) と \(F_2\) がはたらいているとする。

波多野さん
波多野さん

どちらの力も、物体を右へ動かそうとしているね。

黒沼先生
黒沼先生

うむ。この場合、二つの力は互いのはたらきを強め合う。
力の矢印を同じ向きに並べると、合力の矢印は \(F_1\) と \(F_2\) をつなげた長さになるのじゃ。
したがって、合力の大きさ \(R\) は、

\(\boxed{R=F_1+F_2}\)

となる。

波多野さん
波多野さん

同じ向きの力は、大きさをそのまま足せばいいんだね。

黒沼先生
黒沼先生

次は、二つの力が同一直線上で反対向きにはたらく場合を考えてみよう。右向きの力 \(F_1\) と、左向きの力 \(F_2\) がはたらいていたとする。

波多野さん
波多野さん

二つの力が、互いに引っ張り合っているね。

黒沼先生
黒沼先生

うむ。この場合、二つの力は互いのはたらきを打ち消し合う。そのため、合力の大きさは二つの力の差になるのじゃ。

\(\boxed{R=|F_1-F_2|}\)

絶対値が付いているのは、合力の大きさを正の値で表すためじゃ。そして、合力の向きは大きいほうの力と同じ向きになる。

光井くん
光井くん

逆向きの力では、「大きいほうから小さいほうを引く」「向きは大きいほうに合わせる」と考えればよいのですね。

波多野さん
波多野さん

なんだ、簡単じゃん!

力の向きを考えよう

黒沼先生
黒沼先生

ところがどっこい。二つの力の向きが異なる場合はそう単純ではないのじゃ。
どういうことか、実際にアニメーションで見てみよう。
「力の合成」を選び、二つの力の大きさと角度を設定して「再生」を押してみるのじゃ。

黒沼先生
黒沼先生

紫色の矢印 (R) が、二つの力を合わせた力じゃ。
このように、複数の力を、それらと同じはたらきをする一つの力にまとめることを、力の合成という。
合成してできた力を、合力といってこのような式で表されるのじゃ。

\(\boxed{\vec{R}=\vec{F_1}+\vec{F_2}}\)

光井くん
光井くん

力には大きさだけでなく向きがあるので、そのまま足せばいいというわけではないのですね。

黒沼先生
黒沼先生

うむ。向きの異なる二つの力を合成するときは、平行四辺形の法則を使う。
手順は次のとおりじゃ。

  1. 二つの力の矢印を同じ作用点から描く
  2. 二つの矢印を辺とする平行四辺形を作る
  3. 作用点から対角線を引く。

この対角線が合力になるのじゃよ。

波多野さん
波多野さん

ひぇ~。そんなに簡単じゃなかった!

力の分解

黒沼先生
黒沼先生

合力の大きさを求めるまえに、アニメーションの「力の分解」を見てみよう。

波多野さん
波多野さん

斜めの力から、横向きの \(F_x\) と縦向きの \(F_y\) が出てきた!

黒沼先生
黒沼先生

このように、一つの力を、それと同じはたらきをする二つ以上の力に分けることを、力の分解という。
分解してできたそれぞれの力を、分力というぞ。

波多野さん
波多野さん

でも、どうして分ける必要があるの?

黒沼先生
黒沼先生

よい質問じゃ。物体の運動を考えるとき、水平方向と鉛直方向を別々に調べると分かりやすくなるからじゃ。

例えば、荷物を斜め上向きに引っ張る場合、その力には、

  • 荷物を前へ進めるはたらき
  • 荷物を上へ持ち上げるはたらき

の両方が含まれている。
このほかにも斜面上の物体や、糸で引かれた物体の運動を考えるときにも、力の分解が重要になるぞ。

合力の大きさ

波多野さん
波多野さん

合力の大きさはどうやって出せばいいの?
矢印の長さを図ればいいの?ものさし?

光井くん
光井くん

平行四辺形の対角線の長さを出せばいいんだよ。

波多野さん
波多野さん

それがわからないんだよ!
そんなに自信があるなら、説明してみてよ!

光井くん
光井くん

え、うん、わかったよ。
アニメーションの図では大きさが \(F_1\)、\(F_2\) の二つの力があって、その間の角度が\(\theta\) だったよね。

波多野さん
波多野さん

平行四辺形の対角線が合力 \(R\) だったね。

光井くん
光井くん

うん。今回は、力 \(F_2\) を \(F_1\) と同じ水平方向と、鉛直方向へ分解して考えるよ。
\(F_2\) のうち、\(F_1\) と同じ方向の水平成分は、

\(F_2\cos\theta\)

\(F_1\) に鉛直方向の成分は、

\(F_2\sin\theta\)

になるんだ。

波多野さん
波多野さん

力の分解を使うんだな。
で?

光井くん
光井くん

(なんか、変だな)
同じ向きの力の大きさは足すことができるから、合力 \(R\) の水平方向の成分は、

\(F_1+F_2\cos\theta\)

鉛直方向の成分は、

\(F_2\sin\theta\)

になるよね。

波多野さん
波多野さん

だから?

光井くん
光井くん

この二つの成分は互いに直角なので、三平方の定理を使うことができるんだ。

\(R^2=(F_1+F_2\cos\theta)^2+(F_2\sin\theta)^2\)

右辺を展開すると、

\(F_1^2+2F_1F_2\cos\theta+F_2^2\cos^2\theta+F_2^2\sin^2\theta\)

ここで、

\(\sin^2\theta+\cos^2\theta=1\)

だから、

\(R^2=F_1^2+F_2^2+2F_1F_2\cos\theta\)

両辺の正の平方根を取れば、合力の大きさは、

\(\boxed{R=\sqrt{F_1^2+F_2^2+2F_1F_2\cos\theta}}\)

となるんだ。

波多野さん
波多野さん

ふむ、力の分解と、三平方の定理を使ったんじゃな。
なかなか、やるのう。

光井くん
光井くん

な…、まさか!!

波多野さん
波多野さん

ふぉ、ふぉ、ふぉ……。
(ベリベリベリ!!)

黒沼先生
黒沼先生

わしじゃよ。

光井くん
光井くん

何してんですか!!

黒沼先生
黒沼先生

入れ替わっていたのさ!!

黒沼先生
黒沼先生

ちなみに、ここでは水平方向と鉛直方向への力の分解がみそじゃ。

光井くん
光井くん

だから、なんで入れ替わってたんですか!!

合成と分解の関係

波多野さん
波多野さん

力の合成と分解って、まったく別の計算なのかと思ってた。

黒沼先生
黒沼先生

実は、同じ関係を反対側から見ているだけじゃ。

\(\vec{F_x}+\vec{F_y}=\vec{F}\)

左辺から右辺を見ると力の合成、右辺から左辺を見ると力の分解になる。

光井くん
光井くん

アニメーションで「合成」と「分解」を切り替えて見比べると、その関係が分かりやすいですね。

今日のまとめ

黒沼先生
黒沼先生

今日のポイントを整理しておこう。

  • 複数の力を一つにまとめることを力の合成といい、合成してできた力を、合力という
  • 向きの異なる二つの力は、平行四辺形を使って合成できる
  • 一つの力を複数の力に分けることを力の分解といい、分解してできた力を、分力という
  • 斜めの力は、水平方向と鉛直方向に分解できる
  • 水平方向の分力\(F_x\)と鉛直方向の分力\(F_y\)は、
    \(\boxed{F_x=F\cos\theta}\)
    \(\boxed{F_y=F\sin\theta}\)
波多野さん
波多野さん

力を矢印で考えると、合成も分解も分かりやすかった!

光井くん
光井くん

矢印の向きと長さを正しく描くことが大切ですね。

次回 身のまわりにはたらく力

黒沼先生
黒沼先生

机の上に置いた荷物、糸でつるした物体、動いていないくとも、ちゃんと力が働いているのじゃ。

波多野さん
波多野さん

へぇ~。

黒沼先生
黒沼先生

では、わし自身を糸でつるして確かめてみるかの。
波多野さん、縛って💕

光井くん
光井くん

じゃあ、ぼくが縛りますね。(ぎゅっ!)
つるしますよ~。

黒沼先生
黒沼先生

わっ!こわい。
ひぇ~。おもったより、こわいお。
もう、お、おろしてぇ。

黒沼先生
黒沼先生

(ブチッ)
ぐぇ!!

波多野さん
波多野さん

重力は、ちゃんと働いているみたいだね。

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