第18回 力の正体⑦ ニュートンの運動の第3法則-作用・反作用の法則

第2章 力の正体
黒沼先生
黒沼先生

黒沼 電蔵
物理の教鞭をとっている
夏が嫌い、冬も嫌い

波多野さん
波多野さん

波多野さん
勉強が苦手な女の子
どの季節もいいとこあるよね

光井 くん
光井 くん

光井くん
勉強が得意な男の子
春は新鮮で特別な感じがする

はじめに

黒沼先生
黒沼先生

波多野さん、風船をふくらませて、手を離してみるのじゃ。

波多野さん
波多野さん

いいけど……。
それっ!
(ブシュウゥゥゥ――!)

光井くん
光井くん

すごい勢いで飛んでいきましたね。

黒沼先生
黒沼先生

うむ。
風船が空気を後ろへ押し出すと、風船も空気から前向きの力を受けるのじゃ。

波多野さん
波多野さん

押した側も、相手から力を受けるってこと?

黒沼先生
黒沼先生

その通り。今回は、二つの物体が互いに及ぼし合う力の関係―ニュートンの運動の第3法則を学んでいこう。

黒沼先生
黒沼先生

ところで波多野さん、もう一度、風船をふくらませてくれんかの。

波多野さん
波多野さん

え、なんで?

黒沼先生
黒沼先生

え、保存用じゃよ。

波多野さん
波多野さん

ひっ…。き、きもぉ…。

光井くん
光井くん

先生、本当にやめてください。
純粋に気持ち悪いです。

力は二つの物体間にはたらく

黒沼先生
黒沼先生

まず覚えておきたいのは、力は必ず二つの物体の間にはたらくということじゃ。
例えば、手で机を押したとしよう。

  • 手が机を押す
  • 机が手を押し返す

この二つの力は、同時にはたらいておる。

波多野さん
波多野さん

机は動いていなくても、あたしの手を押しているの?

黒沼先生
黒沼先生

うむ。机を強く押すほど、手にも強い力を感じるじゃろう。

光井くん
光井くん

一方の物体が相手に力を加えると、その物体も相手から力を受けるのですね。

作用・反作用の法則

黒沼先生
黒沼先生

物体Aが物体Bに力を加えると、物体Bも物体Aに、同じ大きさで反対向きの力を加える。これを、作用・反作用の法則という。
このとき、二つの力は、大きさが等しく、向きが反対で、同一直線上にはたらくのじゃ。

黒沼先生
黒沼先生

物体Aが物体Bに及ぼす力を
\(\vec{F}_{A\rightarrow B}\)、

物体Bが物体Aに及ぼす力を
\(\vec{F}_{B\rightarrow A}\)

とすると、

\(\boxed{\vec{F}_{A\rightarrow B}=-\vec{F}_{B\rightarrow A}}\)

と表されるのじゃ。

波多野さん
波多野さん

マイナスは二つの力の向きが反対という意味だね。

黒沼先生
黒沼先生

その通りじゃ。作用と反作用には、次の特徴があるぞ。

  • 大きさが等しい
  • 向きが反対
  • 同一直線上にはたらく
  • 同時にはたらく
  • 別々の物体にはたらく

ロケットで作用・反作用を見てみよう

黒沼先生
黒沼先生

作用・反作用の例としてロケットのアニメーションを用意したぞ。
まずは力の大きさを「中」にして、「スタート」を押すのじゃ。

黒沼先生
黒沼先生

ロケットがガスを後ろへ噴き出しながら前へ進んでいる様子がみえるじゃろう。
さて、ロケットとガスの間にはどのような力がはたらいているか、わかるかな?

波多野さん
波多野さん
  • ロケットがガスを後ろ向きに押す力
  • ガスがロケットを前向きに押す力

の二つの力がはたらいているね!!

光井くん
光井くん

二つの矢印は、同じ長さで反対向きになっていますね。

黒沼先生
黒沼先生

矢印の長さは力の大きさを表しておる。
二つの矢印が同じ長さであることから、作用と反作用の力が同じ大きさだと分かるのじゃ。

力の大きさを変えてみよう

黒沼先生
黒沼先生

次は、力の大きさを「小」「中」「大」と切り替えてみよう。

波多野さん
波多野さん

力を大きくすると、噴き出すガスが激しくなってロケットの加速度も大きくなってる!

光井くん
光井くん

反作用の力も同じように大きくなっていますね。

黒沼先生
黒沼先生

うむ。
ロケットがガスを強く押し出すほど、ロケットもガスから強く押される。
ただし、ここで重要なのは、力をどれだけ大きくしても作用と反作用の大きさは必ず等しいということじゃ。

波多野さん
波多野さん

片方の力だけが大きくなることはないんだね。

黒沼先生
黒沼先生

そういうことじゃ。
ちなみに、力が大きいほどロケットの加速度が大きくなることは前回学んだ運動方程式、

\(F=ma\)

で説明できるぞ。

今回は速度の計算よりも、ロケットとガスが同じ大きさの力をお互いに及ぼしていることに注目するのじゃ。

作用と反作用はどちらが先?

波多野さん
波多野さん

ロケットが先にガスを押してから、ガスがロケットを押し返すってことだよね?

黒沼先生
黒沼先生

確かに「作用」という言葉のあとに「反作用」と続くため、順番があるように感じるかもしれんが二つの力は同時にはたらくのじゃ。

光井くん
光井くん

二つの力を区別するために、片方を作用、もう片方を反作用と呼んでいるだけってことだから、どちらを作用と呼んでもいいってことですね。

黒沼先生
黒沼先生

そういうことじゃ。

作用と反作用は同じ種類の力

光井くん
光井くん

作用と反作用は、同じ二つの物体の間でお互いに及ぼしあう力なので同じ種類の力になりますよね?

黒沼先生
黒沼先生

うむ。そこも重要な点じゃ。
例えば、

  • 手が机を押す力と、机が手を押す力
  • 地球が物体を引く力と、物体が地球を引く力
  • ロケットがガスを押す力と、ガスがロケットを押す力

これらは、お互いに同じ種類の力と言える。

光井くん
光井くん

ほかにも、歩くときや泳ぐときの作用・反作用も同じ性質なんですね。

作用・反作用と力のつり合いは同じ?

波多野さん
波多野さん

あれ、作用・反作用は大きさが同じで向きが反対なんだよね。
それなら、二つの力は打ち消し合って、どちらの物体も動かないんじゃないの?

黒沼先生
黒沼先生

そこは間違えやすいところじゃ。
力のつり合いと作用・反作用は似ているように見えて、決定的な違いがある。
力のつり合いは、同じ物体にはたらく力の関係じゃ。
一方、作用・反作用は、別々の物体にはたらく力の関係じゃ。

光井くん
光井くん

二つの力が「誰にはたらいているのか」を見れば、区別できそうですね。

机の上の物体で比べよう

黒沼先生
黒沼先生

机の上に置かれた箱を考えてみよう。
箱には、次の二つの力がはたらいている。

  • 地球が箱を下向きに引く重力
  • 机が箱を上向きに押す垂直抗力

この二つの力の関係は何かな?

波多野さん
波多野さん

どちらも箱にはたらいている力だから、力のつり合いだね。

黒沼先生
黒沼先生

では、垂直抗力と作用・反作用の関係になる力は何かな?

光井くん
光井くん

「箱が机を下向きに押す力」です。

黒沼先生
黒沼先生

その通り。

  • 机が箱を上向きに押す力
  • 箱が机を下向きに押す力

この二つが作用・反作用の関係になる。

波多野さん
波多野さん

垂直抗力の反作用は、重力じゃないんだ!

黒沼先生
黒沼先生

うむ。力の種類だけで判断せず、「何が何に及ぼす力なのか」を確認することが大切じゃ。
二つの力が同じ物体にはたらいていればつり合いを考えられる。
別々の物体にはたらいていれば、作用・反作用の組じゃ。

作用・反作用を見つける手順

黒沼先生
黒沼先生

作用・反作用の組を見つけるときは、次の順番で考えるとよい。

  1. 力を及ぼし合う二つの物体を見つける
  2. 「AがBに及ぼす力」を確認する
  3. 主語と相手を入れ替えて「BがAに及ぼす力」を探す
  4. 二つの力が別々の物体にはたらくことを確認する
  5. 大きさが等しく、向きが反対であることを確認する
波多野さん
波多野さん

「ロケットがガスを押す」なら、主語を入れ替えて「ガスがロケットを押す」だね。

今日のまとめ

黒沼先生
黒沼先生

今日のポイントを整理しておこう。

  • 力は二つの物体の間にはたらく
  • 一方の物体が相手に力を加えると、相手からも力を受ける
  • 作用と反作用は大きさが等しく、向きが反対である
  • 作用と反作用は同一直線上に同時にはたらく
  • 二つの力は別々の物体にはたらく
  • 作用・反作用の二つの力を一つの物体の合力として足すことはできない
  • 作用・反作用の関係は力のつり合いの関係とは異なる
  • 作用・反作用の関係は以下の式で表される

\(\boxed{\vec{F}_{A\rightarrow B}=-\vec{F}_{B\rightarrow A}}\)

波多野さん
波多野さん

二つの力が同じ物体にはたらいているのか、別々の物体にはたらいているのかを確認することが大切なんだ!

黒沼先生
黒沼先生

うむ。その違いが分かれば、力のつり合いとも区別できるぞ。

次回 摩擦力

黒沼先生
黒沼先生

悪いが、実験に使う机を少し動かしてくれんかの?

波多野さん
波多野さん

よいしょ……。
あれ?
押してるのに、全然動かないよ。

光井くん
光井くん

机なら引きずるよりも持ち上げたほうが運びやすいよ。

波多野さん
波多野さん

なんでぇ…?

黒沼先生
黒沼先生

机と床の間に、動き出すのを妨げる力がはたらいているからじゃ。
次回はこの摩擦力について学んでみようか。

波多野さん
波多野さん

ぬぬぬぬぬ……。
動けぇぇぇっ!(ズズッ!)

波多野さん
波多野さん

わっ!
急に動いた!

黒沼先生
黒沼先生

(ドンッ!)
ぐえっ!いたいっ!

光井くん
光井くん

最近、こんなのばっかですね。

黒沼先生
黒沼先生

それは、わしのセリフじゃ…。

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