
黒沼 電蔵
物理の教鞭をとっている
酢の物を好んで食すといわれている

波多野さん
勉強が苦手な女の子
ハラミが好き

光井くん
勉強が得意な男の子
カップラーメンの食べ比べが趣味
はじめに

せんせー。車みたいにだんだん速くなる運動はどうやって考えるの?

おお、とてもいい質問じゃ。
そこに気がつくとは、先生はうれしいぞ💕

僕も気になっていました。

そうかい。
彼女に説明するから、すみっこで聞いててもいいよ。
よかったね。

扱いが…。

波多野さんに感謝したまえ!
速度が変化する運動

前回の等速直線運動では、速度はずっと一定じゃった。今回は、速度が時間とともに変化する運動を考えてみよう。
まず、「加速度」とは何かな?

えっ、「どれくらい速くなったか」ということじゃない?

いい回答じゃ。
「加速度」とは速度そのものではなく、「速度がどれくらい変化したか」を表す量なんじゃよ。
そしてその変化が一定の場合「等加速度」というのじゃ。

前回との違いを並べると、
等速直線運動 → 速度が一定
等加速度運動 → 加速度が一定
ですね。

おぉ。今日は調子が良いようじゃな。

ありがとうございます。

少し、腹が立ってきた。

なんでですか!


これを式にすると、
じゃ。
ここで、
\(a\):加速度
\(v_0\):最初の速度(初速度)
\(v\):\(t\) 秒後の速度
\(t\):時間
を表しておる。
速度の変化を変化にかかった時間で割ったものが加速度じゃ。

加速度 = 1秒あたりの速度の変化と考えればいいんですね。
等加速度運動を見てみよう

ここで、実際に物体がどのように運動するのか見てみよう。
今回のアニメーションでは、「加速する」「減速する」「反対向きに加速する」を切り替えられる。
さらに、物体の運動と同時に、x-tグラフ・v-tグラフ・a-tグラフも表示されるぞ。

「加速する」にすると、車がどんどん速くなっていく!

ここでは加速度を
としておる。
これは、1秒ごとに速度が2.0 m/sずつ変化するという意味じゃ。
「m/s²」って何?

ずっと気になってたんだけど……。
m/s²って何?
なんか急に強そうな単位が出てきた。

ほっほっほ。見た目は少々物騒じゃが、意味が分かれば簡単じゃよ。
速度の単位は m/sじゃったな。
加速度は、その速度が1秒あたりどれだけ変化するかじゃ。
だから、
となる。
つまり、 2.0 \(m/s^2\)なら、
「1秒ごとに速度が2.0 m/sずつ変化する」
ということじゃ。

なるほど!単位にもちゃんと意味が込められているんだ。
グラフを見てみよう
x-tグラフ

x-tグラフは直線じゃないんだね。
なんか、ぐいーんって曲がってる。


いいところに気が付いたのう。
等加速度運動では、速度そのものが変化する。
そして速くなればなるほど、同じ1秒間でも大きく移動するようになる。
だからx-tグラフの傾きは、時間とともに変わっていくんじゃ。

なるほど、x-tグラフの傾きが速度だから、速度が大きくなるほどグラフの傾きも大きくなるわけですね。

正解じゃ。
……今日はもうしゃべらなくてよいぞ。

正解したのに!?
v-tグラフ


v-tグラフは斜めの直線になってる。

そうじゃ。一定時間ごとに速度が同じだけ増えるから、v-tグラフは直線になる。
この直線の傾きは何を表しているかな。

1秒ごとに2m/sずつ速度が増えているということは「加速度」のことでしょうか。

うむ。
じゃから、
v-tグラフの傾き=加速度
となる。

前回は、x-tグラフの傾き=速度だったよね。

よく覚えていたのう!
xーtグラフの傾き = 速度
vーtグラフの傾き = 加速度
運動・速度・加速度は、バラバラの話ではないんじゃよ。
a-tグラフ


a-tグラフは横一直線だね。

その通り。
横軸が時間 t、縦軸が加速度 a じゃ。
今回の運動では、
がずっと変わらない。
だからa-tグラフは水平な直線になる。

つまり、
等加速度運動 → a-tグラフは水平
ということですね。
1つ目の公式

ここまで理解できれば、最初の公式はほとんど出来上がっておる。
加速度は、
じゃった。
両辺に をかけると、したがって、
となる。これが1つ目の等加速度運動の公式じゃ。

加速度の式を変形しただけなんだ!

その通りじゃ。
意味としてはもっと簡単で、
今の速度=最初の速度+その間に変化した速度
というだけなんじゃよ。
「減速する」を見てみよう

ここまでは、速度がだんだん大きくなる運動を見てきた。では今度は「減速する」を選んでみよう。

今度は、だんだん遅くなってる!

そうじゃ。この場合、正方向に進んでいる物体の速度は、時間とともに小さくなっていく。v-tグラフを見ると、今度は右下がりの直線になるじゃろう。

つまり、加速度が負ということですね。

ここで大切なのは、「加速度が負=必ず左向きに動く」ではないということじゃ。今回のように速度が正で加速度が負なら、物体は正方向へ進みながらだんだん遅くなる。
ただし…、

「反対向きに加速する」では左向きに進んでる!

そう、速度が負の場合は反対向きに速くなっていくのじゃ。
v-tグラフの面積には意味がある

さて、v-tグラフの面積は何を表しているかわかるかな?

グラフの面積?
何か意味があるの?

まずは、速度がずっと一定の場合から考えてみよう。
たとえば、
速度 $$v=4\ \mathrm{m/s}$$ で
時間 $$t=3\ \mathrm{s}$$
進んだとする。
このとき移動した変位は、
だから、
じゃな。

うん。前回やったやつだね。

では、この運動をv-tグラフにするとどうなるかな。
速度が4 m/sで一定だから、グラフは水平になる。


ここで、グラフと時間軸に囲まれた長方形の面積を求めてみよう。
縦の長さは速度 v。
横の長さは時間 t。
だから面積は
つまり、移動した変位\(x\)を表しているのじゃ。

v-tグラフの面積=変位ということですね。
2つ目の公式

でも、今回は速度が変わってるよね。

その通り。だから下の図のように考えてみるのじゃ。


この図を見ると、面積を長方形+三角形に分けられるじゃろう。
長方形の面積は、
三角形の面積は、
となる。したがって、変位\(x\)は全体の面積になるため、
じゃ。
実は、これが等加速度運動の2つ目の式なのじゃよ。

ちなみに
という式は加速度が のまま 秒間続けば、速度の増加分が、
となることを意味した式ですね。

うむ、加速度の式を変形したものじゃよ。
3つ目の公式

これで2つの公式を勉強したのう。と、同時にもう1つの公式も身に着けたことになる。

え、どうゆうこと。

最後の公式は時間\(t\)を使わない式なのじゃが…、
なんと、これまでの公式を組み合わせることで簡単に導けるのじゃ。
時間\(t\)を消してみよう

まず1つ目の公式、
から、
となる。これを2つ目の公式、
に代入すればよいのじゃ。

覚えなくてもいいのはいいけど、計算が大変そうだなぁ。

そうじゃな。波多野さんにそんな苦行をさせるわけにはいかん。
光井くん、出番だ。

なんか、納得いかないですけど。
まず、
を について解くと、
なので、
です。そして、この を
に代入します。すると、

うっ……急に強そうな式になった。

馬鹿者!!さっさと、整理せんか。波多野さんが困っておるじゃろ。

…整理すると、
分母をそろえると、
でくくれば、
つまり、
ここで和と差の積を利用すると、
となるので、

したがって、
両辺に をかければ、
これが3つ目の公式じゃ。

最後だけ持ってかれた…。

ぐぅ……💤

寝てるし。
今日のまとめ

今日のポイントを整理してみよう。
・加速度:速度の変化の割合
・等加速度運動:加速度が一定の運動
・a-tグラフ:水平な直線
・v-tグラフの傾き:加速度
・v-tグラフの面積:変位
・x-tグラフの傾き:速度

そして、等加速度運動の3公式は、
\(\boxed{v=v_0+at}\)
\(\boxed{x=v_0t+\frac{1}{2}at^2}\)
\(\boxed{v^2-v_0^2=2ax}\)

最初は公式が3つも出てきて嫌だなって思ったけど……、
動きやグラフから考えると、ちゃんと意味があるんだね。

公式だけを切り離して覚えないこと。
「なぜこの式になるのか」
を理解することが重要なんですね。
次回 自由落下

せんせ~。
等加速度運動って、実際にはどんなところで出てくるの?

では、これを落としてみよう。

……なんで僕の教科書を持ってるんですか?

手を離したらどうなるかな。

下に落ちるんじゃない。

そうじゃ。このように物体が重力だけを受けて落下する運動を、自由落下という。
そして自由落下は、今回学んだ等加速度運動として考えることができるんじゃ。
次回はこの自由落下について勉強してみよう。

先生、説明は分かりましたから教科書を返して――

では実験開始。

人の教科書で自由落下を実演しないでください!!
