第7回 運動の基本⑥ 等加速度直線運動

第1章 運動の基本
黒沼先生
黒沼先生

黒沼 電蔵
物理の教鞭をとっている
酢の物を好んで食すといわれている

波多野さん
波多野さん

波多野さん
勉強が苦手な女の子
ハラミが好き      

光井くん
光井くん

光井くん
勉強が得意な男の子
カップラーメンの食べ比べが趣味     

はじめに

波多野さん
波多野さん

せんせー。車みたいにだんだん速くなる運動はどうやって考えるの?

黒沼先生
黒沼先生

おお、とてもいい質問じゃ。
そこに気がつくとは、先生はうれしいぞ💕

光井くん
光井くん

僕も気になっていました。

黒沼先生
黒沼先生

そうかい。
彼女に説明するから、すみっこで聞いててもいいよ。
よかったね。

光井くん
光井くん

扱いが…。

黒沼先生
黒沼先生

波多野さんに感謝したまえ!

速度が変化する運動

黒沼先生
黒沼先生

前回の等速直線運動では、速度はずっと一定じゃった。今回は、速度が時間とともに変化する運動を考えてみよう。
まず、「加速度」とは何かな?

波多野さん
波多野さん

えっ、「どれくらい速くなったか」ということじゃない?

黒沼先生
黒沼先生

いい回答じゃ。
「加速度」とは速度そのものではなく、「速度がどれくらい変化したか」を表す量なんじゃよ。
そしてその変化が一定の場合「等加速度」というのじゃ。

光井くん
光井くん

前回との違いを並べると、
等速直線運動 → 速度が一定
等加速度運動 → 加速度が一定
ですね。

黒沼先生
黒沼先生

おぉ。今日は調子が良いようじゃな。

光井くん
光井くん

ありがとうございます。

黒沼先生
黒沼先生

少し、腹が立ってきた。

光井くん
光井くん

なんでですか!

黒沼先生
黒沼先生

これを式にすると、

a=v−v0ta=\frac{v-v_0}{t}

じゃ。
ここで、
\(a\):加速度
\(v_0\)​:最初の速度(初速度)
\(v\):\(t\) 秒後の速度
\(t\):時間
を表しておる。
速度の変化を変化にかかった時間で割ったものが加速度じゃ。

光井くん
光井くん

加速度 = 1秒あたりの速度の変化と考えればいいんですね。

等加速度運動を見てみよう

黒沼先生
黒沼先生

ここで、実際に物体がどのように運動するのか見てみよう。
今回のアニメーションでは、「加速する」「減速する」「反対向きに加速する」を切り替えられる。
さらに、物体の運動と同時に、x-tグラフ・v-tグラフ・a-tグラフも表示されるぞ。

波多野さん
波多野さん

「加速する」にすると、車がどんどん速くなっていく!

黒沼先生
黒沼先生

ここでは加速度を

a=+2.0 m/s2\\a = +2.0 \text{ m/s}^2\\

としておる。
これは、1秒ごとに速度が2.0 m/sずつ変化するという意味じゃ。

「m/s²」って何?

波多野さん
波多野さん

ずっと気になってたんだけど……。
m/s²って何?
なんか急に強そうな単位が出てきた。

黒沼先生
黒沼先生

ほっほっほ。見た目は少々物騒じゃが、意味が分かれば簡単じゃよ。
速度の単位は m/sじゃったな。
加速度は、その速度が1秒あたりどれだけ変化するかじゃ。
だから、

m/ss​=m/s2\frac{m/s}{s}​=m/s^2

となる。
つまり、 2.0 \(m/s^2\)なら、
「1秒ごとに速度が2.0 m/sずつ変化する」
ということじゃ。

波多野さん
波多野さん

なるほど!単位にもちゃんと意味が込められているんだ。

グラフを見てみよう

x-tグラフ

波多野さん
波多野さん

x-tグラフは直線じゃないんだね。
なんか、ぐいーんって曲がってる。

黒沼先生
黒沼先生

いいところに気が付いたのう。
等加速度運動では、速度そのものが変化する。
そして速くなればなるほど、同じ1秒間でも大きく移動するようになる。
だからx-tグラフの傾きは、時間とともに変わっていくんじゃ。

光井くん
光井くん

なるほど、x-tグラフの傾きが速度だから、速度が大きくなるほどグラフの傾きも大きくなるわけですね。

黒沼先生
黒沼先生

正解じゃ。
……今日はもうしゃべらなくてよいぞ。

光井くん
光井くん

正解したのに!?

v-tグラフ

波多野さん
波多野さん

v-tグラフは斜めの直線になってる。

黒沼先生
黒沼先生

そうじゃ。一定時間ごとに速度が同じだけ増えるから、v-tグラフは直線になる。
この直線の傾きは何を表しているかな。

光井くん
光井くん

1秒ごとに2m/sずつ速度が増えているということは「加速度」のことでしょうか。

黒沼先生
黒沼先生

うむ。

加速度=速度の変化時間加速度=\frac{速度の変化}{時間}

じゃから、
v-tグラフの傾き=加速度
となる。

波多野さん
波多野さん

前回は、x-tグラフの傾き=速度だったよね。

黒沼先生
黒沼先生

よく覚えていたのう!

xーtグラフの傾き = 速度
vーtグラフの傾き = 加速度

運動・速度・加速度は、バラバラの話ではないんじゃよ。

a-tグラフ

波多野さん
波多野さん

a-tグラフは横一直線だね。

黒沼先生
黒沼先生

その通り。
横軸が時間 t、縦軸が加速度 a じゃ。
今回の運動では、

a​=+2.0m/s2a​=+2.0m/s^2

がずっと変わらない。
だからa-tグラフは水平な直線になる。

光井くん
光井くん

つまり、
等加速度運動 → a-tグラフは水平
ということですね。

1つ目の公式

黒沼先生
黒沼先生

ここまで理解できれば、最初の公式はほとんど出来上がっておる。
加速度は、a=v−v0ta=\frac{v-v_0}{t}

じゃった。
両辺に tt をかけると、at=v−v0at=v-v_0したがって、

v=v0+at\boxed{v=v_0+at}

となる。これが1つ目の等加速度運動の公式じゃ。

波多野さん
波多野さん

加速度の式を変形しただけなんだ!

黒沼先生
黒沼先生

その通りじゃ。
意味としてはもっと簡単で、
今の速度=最初の速度+その間に変化した速度
というだけなんじゃよ。

「減速する」を見てみよう

黒沼先生
黒沼先生

ここまでは、速度がだんだん大きくなる運動を見てきた。では今度は「減速する」を選んでみよう。

波多野さん
波多野さん

今度は、だんだん遅くなってる!

黒沼先生
黒沼先生

そうじゃ。この場合、正方向に進んでいる物体の速度は、時間とともに小さくなっていく。v-tグラフを見ると、今度は右下がりの直線になるじゃろう。

光井くん
光井くん

つまり、加速度が負ということですね。

黒沼先生
黒沼先生

ここで大切なのは、「加速度が負=必ず左向きに動く」ではないということじゃ。今回のように速度が正で加速度が負なら、物体は正方向へ進みながらだんだん遅くなる。
ただし…、

波多野さん
波多野さん

「反対向きに加速する」では左向きに進んでる!

黒沼先生
黒沼先生

そう、速度が負の場合は反対向きに速くなっていくのじゃ。

v-tグラフの面積には意味がある

黒沼先生
黒沼先生

さて、v-tグラフの面積は何を表しているかわかるかな?

波多野さん
波多野さん

グラフの面積?
何か意味があるの?

黒沼先生
黒沼先生

まずは、速度がずっと一定の場合から考えてみよう。
たとえば、
速度 $$v=4\ \mathrm{m/s}$$ で
時間 $$t=3\ \mathrm{s}$$
進んだとする。
このとき移動した変位は、

x=vtx=vt

だから、

x=4×3=12 mx=4\times3=12\ \mathrm{m}

じゃな。

波多野さん
波多野さん

うん。前回やったやつだね。

黒沼先生
黒沼先生

では、この運動をv-tグラフにするとどうなるかな。
速度が4 m/sで一定だから、グラフは水平になる。

黒沼先生
黒沼先生

ここで、グラフと時間軸に囲まれた長方形の面積を求めてみよう。

縦の長さは速度 v。
横の長さは時間 t。

だから面積は


v×tv\times t

つまり、移動した変位\(x\)を表しているのじゃ。

光井くん
光井くん

v-tグラフの面積=変位ということですね。

2つ目の公式

波多野さん
波多野さん

でも、今回は速度が変わってるよね。

黒沼先生
黒沼先生

その通り。だから下の図のように考えてみるのじゃ。

黒沼先生
黒沼先生

この図を見ると、面積を長方形+三角形に分けられるじゃろう。
長方形の面積は、

v0tv_0t

三角形の面積は、

12at2\frac12at^2

となる。したがって、変位\(x\)は全体の面積になるため、

x=v0t+12at2x=v_0t+\frac12at^2

じゃ。
実は、これが等加速度運動の2つ目の式なのじゃよ。

光井くん
光井くん

ちなみに

v−v0=atv-v_0=at

という式は加速度が aa のまま tt 秒間続けば、速度の増加分が、

atat

となることを意味した式ですね。

黒沼先生
黒沼先生

うむ、加速度の式を変形したものじゃよ。

3つ目の公式

黒沼先生
黒沼先生

これで2つの公式を勉強したのう。と、同時にもう1つの公式も身に着けたことになる。

波多野さん
波多野さん

え、どうゆうこと。

黒沼先生
黒沼先生

最後の公式は時間\(t\)を使わない式なのじゃが…、
なんと、これまでの公式を組み合わせることで簡単に導けるのじゃ。

時間\(t\)を消してみよう

黒沼先生
黒沼先生

まず1つ目の公式、

v=v0+atv=v_0+at

から、

t=v−v0at=\frac{v-v_0}{a}

となる。これを2つ目の公式、

x=v0t+12at2x=v_0t+\frac12at^2

に代入すればよいのじゃ。

波多野さん
波多野さん

覚えなくてもいいのはいいけど、計算が大変そうだなぁ。

黒沼先生
黒沼先生

そうじゃな。波多野さんにそんな苦行をさせるわけにはいかん。
光井くん、出番だ。

光井くん
光井くん

なんか、納得いかないですけど。
まず、

v=v0+atv=v_0+at

を tt について解くと、


v−v0=atv-v_0=at

なので、

t=v−v0at=\frac{v-v_0}{a}

です。そして、この tt を

x=v0t+12at2x=v_0t+\frac12at^2

に代入します。すると、

x=v0v−v0a+12a(v−v0a)2x = v_0 \frac{v-v_0}{a} + \frac{1}{2}a\left(\frac{v-v_0}{a}\right)^2
波多野さん
波多野さん

うっ……急に強そうな式になった。

黒沼先生
黒沼先生

馬鹿者!!さっさと、整理せんか。波多野さんが困っておるじゃろ。

光井くん
光井くん

…整理すると、

x=v0(v−v0)a+(v−v0)22ax = \frac{v_0(v-v_0)}{a} + \frac{(v-v_0)^2}{2a}

分母をそろえると、

x=2v0(v−v0)+(v−v0)22ax = \frac{2v_0(v-v_0)+(v-v_0)^2}{2a}

(v−v0)(v-v_0) でくくれば、

x=(v−v0){2v0+(v−v0)}2ax = \frac{(v-v_0)\{2v_0+(v-v_0)\}}{2a}

つまり、

x=(v−v0)(v+v0)2ax = \frac{(v-v_0)(v+v_0)}{2a}

ここで和と差の積を利用すると、

(v−v0)(v+v0)=v2−v02(v-v_0)(v+v_0)=v^2-v_0^2

となるので、

黒沼先生
黒沼先生

したがって、

x=v2−v022ax=\frac{v^2-v_0^2}{2a}

両辺に 2a2a をかければ、

v2−v02=2ax\boxed{v^2-v_0^2=2ax}

これが3つ目の公式じゃ。

光井くん
光井くん

最後だけ持ってかれた…。

波多野さん
波多野さん

ぐぅ……💤

光井くん
光井くん

寝てるし。

今日のまとめ

黒沼先生
黒沼先生

今日のポイントを整理してみよう。

・加速度:速度の変化の割合
・等加速度運動:加速度が一定の運動
・a-tグラフ:水平な直線
・v-tグラフの傾き:加速度
・v-tグラフの面積:変位
・x-tグラフの傾き:速度

黒沼先生
黒沼先生

そして、等加速度運動の3公式は、

\(\boxed{v=v_0+at}\)

\(\boxed{x=v_0t+\frac{1}{2}at^2}\)

\(\boxed{v^2-v_0^2=2ax}\)

波多野さん
波多野さん

最初は公式が3つも出てきて嫌だなって思ったけど……、
動きやグラフから考えると、ちゃんと意味があるんだね。

光井くん
光井くん

公式だけを切り離して覚えないこと。
「なぜこの式になるのか」
を理解することが重要なんですね。

次回 自由落下

波多野さん
波多野さん

せんせ~。
等加速度運動って、実際にはどんなところで出てくるの?

黒沼先生
黒沼先生

では、これを落としてみよう。

光井くん
光井くん

……なんで僕の教科書を持ってるんですか?

黒沼先生
黒沼先生

手を離したらどうなるかな。

波多野さん
波多野さん

下に落ちるんじゃない。

黒沼先生
黒沼先生

そうじゃ。このように物体が重力だけを受けて落下する運動を、自由落下という。
そして自由落下は、今回学んだ等加速度運動として考えることができるんじゃ。
次回はこの自由落下について勉強してみよう。

光井くん
光井くん

先生、説明は分かりましたから教科書を返して――

黒沼先生
黒沼先生

では実験開始。

光井くん
光井くん

人の教科書で自由落下を実演しないでください!!

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