
黒沼 電蔵
物理の教鞭をとっている
子供のころの夢はもう思い出せない

波多野さん
勉強が苦手な女の子
小学生のころの夢はケーキ屋さん

光井くん
勉強が得意な男の子
公務員になって地域に貢献したい
はじめに

前回は「等加速度運動」について勉強したのう。

加速度が一定の運動だったよね!
速度がどんどん変わっていくやつ。

その通りじゃ。よく覚えていたねぇ。えらいえらい。

そして、等加速度運動の3つの公式を学びました。

えらそうに…。

なんなんですか。。

では、ボールを持って、そのまま手を離したらどうなるかな?

落ちる!

大正解じゃ!!
今日は、この当たり前に見える「落ちる運動」を物理で考えてみよう。
まずはボールを落としてみよう

まずは実際に落ちる運動を観察してみよう。

このアニメーションでは高さ80 mから物体を落とし、時間・高さ・速度・加速度と、y-t・v-t・a-tグラフが同時に変化するようになっていますね。

「空気抵抗なし」を選んで「落とす!」を押してみるのじゃ。

落ちた!
……って、当たり前か。
でも、下に行くほど、どんどん速くなってる?

いい着眼点じゃ。
同じ時間ごとの位置を見ると、落下するにつれて進む距離が大きくなっている。
つまり、物体は落下しながら加速しているということじゃ。
なぜ落ちるほど速くなるの?

でも、どうして速くなっていくのかな?

とてもいい質問じゃ。
物体は地球から重力を受けているからじゃよ。この重力によって物体には下向きの加速度が生じる。これを重力加速度といい、記号 で表す。
地表付近では、およそ、
じゃ。

1秒ごとに下向きの速度が約9.8 m/sずつ増えるということですね。
自由落下は「等加速度運動」

あっ!
a-tグラフが横一直線になってる!

そうじゃ。
空気抵抗を無視すると、落下中の物体には一定の重力加速度がはたらき続ける。
つまり、加速度が一定なんじゃ。

それって前回やった……等加速度運動!?

エクセレント!!
その通りじゃ!
自由落下は、重力による等加速度運動なんじゃよ。

だから第7回で勉強した公式がそのまま使えるわけですね。

……ぷい。

今のは褒めてもよくないですか?
等加速度運動の公式を使ってみよう

つまり、自由落下だからといって、新しい公式を一から覚える必要はない。
第7回で学んだ等加速度運動の式を使えばよいのじゃ。

今回は分かりやすく、落下する向きを正として考えてみよう。
すると、
じゃ。
さらに、物体をそっと手から離したこととすると、
となる。
速度を求める式

まずは、
に、
を入れてみよう。すると、
だから、
となる。

あ!前回の公式に0と\(g\)を入れただけなんだ!
落下距離を求める式

次は、
じゃ。
同じように、
を代入すると、
したがって、
となる。

こっちも同じだ!

そうじゃ。
そして3つ目も同じように、
へ代入すれば、
となる。
つまり自由落下では、
となるわけじゃ。

結局、3つとも等加速度運動の公式から導けるんだ。
………でも、…あれ?
重い物体のほうが速く落ちる?

ボールの重さが式には入ってないよ?
重いものと軽いものを落としたら、重いもののほうが速く落ちるんじゃないの?

いい質問じゃ。では、この図を見てみよう。


えっ?
「空気抵抗がない場合」だと、全部同時に地面についてる!

そうなんじゃ。
空気抵抗を無視すれば、軽い物体も重い物体も、同じ重力加速度 \(g\)で落下するんじゃよ。

でも、重い物体のほうが重力が強そうだけど……。

実際、重い物体ほど重力そのものは大きい。
しかし、重い物体ほど動かしにくさも大きくなる。
その結果、空気抵抗を無視すれば落下するときの加速度は同じになるんじゃ。

ところが、実際に物体を落とすと、落ち方に違いが出ることがある。その大きな理由が、空気抵抗じゃ。
アニメーションを「空気抵抗あり」に切り替えて見てみよう。

さっきと動きが違う!

落下している物体には、
下向きに重力
そして、
上向きに空気抵抗
がはたらく。
同じ形・同じ大きさの物体を比べると、重い物体は軽い物体に比べて重力が大きいため、同程度の空気抵抗を受けても、その影響は相対的に小さくなるんじゃ。

軽い物体のほうが空気抵抗の影響が大きいから、落ちるのが遅くなりやすいってことかぁ。

「重いから速く落ちる」というより、
「空気抵抗の影響の受け方が違う」と考えたほうがいいんですね。

そういうことじゃ。
物体の形や断面積なんかでも空気抵抗は変わるしの。
速度には限界がある?

じゃあ、せんせい。
ずーと落ち続けたら速度はどうなるの?
すごく速くなりそうだけど。

\(v=gt\)だから、落ちている時間が長くなるほど速くなりますよね。

それは、空気抵抗がない場合の話じゃな。実は、物体の速度が速くなればなるほど、空気抵抗は大きくなっていくのじゃ。

重力加速度で速くなるけど、空気抵抗で遅くなる?

そうじゃ、すると下向きの重力と上向きの空気抵抗との差がだんだん小さくなる。つまり、加速度が小さくなっていくのじゃ。そして、最終的に、重力と空気抵抗が釣り合うようになると…、

加速度が0になってしまい、速度が増加しなくなる。

そういうことじゃ。この時の速度を終端速度というのじゃ。

現実では、いつまでも速くなり続けるわけじゃないんだ!
自由落下の式は間違い?

じゃあ、自由落下の式って嘘なの?
せっかく勉強したのに…。

いや、そうではないぞ。高校物理で自由落下を考えるときは、基本的に、
「空気抵抗を無視する」という条件で考えているんじゃ。
そして、君だけには嘘はつかない(キリ)。

へ~。わざと簡単にしてるってこと?

…その通り。現実の世界では、空気抵抗だけでなく、物体の形や大きさなど、さまざまなものが影響する。全部考えようとすると、とても複雑じゃ。
そこで、重要な部分だけを取り出して現象を考える。
これをモデル化というんじゃ。

つまり、「現実と完全に同じではない」ことは「間違っている」というわけではないんですね。

…うん。
今日のまとめ

では、今日のポイントを整理しておこう。
・自由落下:物体をそっと離し(\(v_0=0\))、重力だけを受けて落下する等加速度運動。
・落下する向きを正にすれば、\[ a=g \]
・\(v_0=0\)の自由落下では、\[ \boxed{v=gt} \]\[ \boxed{x=\frac12gt^2} \]\[ \boxed{v^2=2gx} \]

ただし、これらは空気抵抗を無視した場合じゃ。

「物が落ちるだけ」で簡単そうだったのに、意外と奥が深かった!
でも、自由落下も等加速度運動だったってことは分かったかな。

うむ。それが今回、一番覚えて帰ってほしいことじゃ。
「どんな運動なのか」を考えることが大切なんじゃよ。
次回 鉛直投げ上げ・投げ下ろし

今日はボールをそっと離したよね?

うむ。

じゃあ、最初から勢いよく下に投げたらどうなるの?
それから、上に投げたら?

……素晴らしい。
次回やろうと思っていたことを全部言ってくれた。

それ、僕が言ったら怒るやつですよね。

そうだよ。

もう隠す気すらないんですね。

次回は、「鉛直投げ上げ・投げ下ろし」じゃ。
自由落下との違いは何なのかを考えてみよう。
